絹に絵を描く道の遠く深いことを感じながら、大宇宙の深みのもと、地球の大自然の中で人間は天と地の間に生かされている存在と知り、このちっぽけな人間の根源的な心、その生きる喜び、尊さ、迷い、悩みの表現をまとめられないままいつしか半世紀近くを過ごしました。
自然が創りだす一瞬の風景との出逢いは、いつの場合でもただ一度のことであり、それは何人をしても侵しえない神の創造の世界です。自然も私たちも共に生きていて常に移り変わり、生成発展の輪を描いて変化していく宿命を持っています。だから、自然も人間も同じ根に繁っていると思われます。
1年を通じての季節の推移が、変化を伴って自然の上に鮮明に現れることは、天地の生命を豊かに繁栄している証であり、それを敏感に採り入れて、日常の生活の流れの上に、活気を与える方便としているのは、日本民族の遠い昔ながらの生活の知恵であります。それはまた、日本の美の特色を創りだした要素のひとつでもあると思われます。日本は自然の風景美に恵まれた国であります。私たちは、この日本の自然を大切にする心をいつまでも失いたくないものです。
この度のモスクワ作品展に際し、「天地自然・日本の四季」を創作いたしました。
「天地自然」をまとめるにあたり、今また強く無限であることを思い知るのみであります。
海外出展作品(一例)